今回はありそうでなかった題材です。
新谷商店の素材へのこだわりは何か?
答えは「足摺岬沖で冬季に一本釣りされたメヂカ(寒目近)を用いること」です。
理由は宗田節の素材として最高だからに他ありません。
宗田節(削り節)のようなシンプルな食材は、素材の良し悪しで仕上がりの味の最大値が決まるように思います。
適切な加工を施すことでその最大値に到達できるでしょう。
素材の性質を見極め、仕上がりのブレを少なくするのが職人の腕でしょうか。
水の違い、火の違い、設備の違い、それらを扱う人の違い・・・諸々の違いによって到達点も異なり、それぞれの節納屋の味になるのだと思います。
ただ「足摺岬沖の一本釣り寒目近」と一言で表してもその定義は難しいです。
十年ほど前までなら寒目近は1~3月に獲れたうちの8割以上で対象となる数量は数千トンはあったでしょう。
ここ数年は2月に獲れたうちの5割以下で数百トンあれば良い方です。
ちなみに上記のトン数は原魚なので、宗田節となるとその2割、削り節にするとさらに減ると考えれば、寒目近の削り節は1年間に数十トンほどしかないことになります。
寒目近に限らず宗田節の品質は大まかに3段階に分けられ、良いものから順に「上品・並品・次品」と呼びます。節納屋によってはA品・B品という呼び方もします。
絶対的な数値で決めるものではないので節納屋によっても違うでしょうし、同じ節納屋でも年によって違うかもしれません。
以前は節納屋の間で
ピッカリ と呼ぶような最上品もありましたが、近年はまとまった量はなくなりました。字ばかりでも面白くないので記録と記憶を元にしたイメージを描いてみました。
縦軸に品質の良し悪し、横軸は量を表し棒グラフの面積が数量となります。
以前の質・量が羨ましいですね。
近年はまさに細々とした量のなかで、上品と並品の曖昧な品質を試行錯誤を繰り返しながら選別して商品造りをしています。
品質の良し悪し≒脂の多寡、とも言えますがもちろん品質が悪い≒脂が多いからと言ってダメなわけではありません。それぞれの品質によって適切な使い道があります。
当店でも経験的に寒目近の品質によって選別し、適した商品毎に使用しています。
寒目近の時期というのは年によって違い見極めが難しいですが、上品の割合が並品を大きく下回るようであれば寒目近の時期とは言えず、年々短くなっているのは寂しい限りです。
宗田節日本一の土佐清水を支えているのは寒目近であると言っても過言ではありません。
寒目近というトップブランドがあるからこそ別の時期の目近も輝き、他地区と差別化できていると思います。
素材へのこだわりから寒目近の定義まで話は移っていきましたが、これはあくまで私の見解です。諸説あると思いますので参考程度にしていただければ幸いです。
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